第240章 今度は、彼が甘やかす番

「まあ、見てろよ。手加減はしないからな」

陸上睦月はそう言い残して立ち上がり、去っていった。女神を追いかけるのは、口が達者な方が勝つというものではない。伊井瀬奈のような恋愛で傷ついた経験のある女性は、そう簡単には愛を信じないだろう。

彼女には時間が必要だと、彼は思った。少しずつ安心感を築いていけばいい。心を尽くせば、いつか彼女の心の中で確かな位置を占めることができるはずだ。

黒川颯は炎天下にしばらく立ち尽くしていた。これまでにない危機感が、彼をどうしようもない気持ちにさせていた。それは彼のような、生まれながらにして上位に立つ人間が味わったことのない感覚だった。

彼の周りには常に女性が...

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