第285章

黒川颯の視線が伊井瀬奈の足元に落ち、眉をひそめた。

「瀬奈、どうして靴を履いていないんだ? 床、冷たくないか?」

伊井瀬奈は喉の渇きを覚え、唇を舐めた。

「あなたのものに人が触るの、嫌いでしょう。私があなたのスリッパを履くわけないじゃない」

黒川颯は苦笑した。

「俺は他人に自分のものを触られるのが嫌いなだけだ。お前は他人なのか? 外に出て靴を履け。足の裏を冷やすな」

伊井瀬奈は心の中で毒づく。もう離婚したっていうのに、今さら身内ぶらないでほしい。昔、同じベッドで寝ていた時でさえ、あなたはスリッパを貸してくれようともしなかったくせに。

心の中でぶつぶつ言いながらも、彼女はその場か...

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