第304章

暗闇の中、伊井瀬奈は息を呑んだ。

家の者が子供たちに何か言うべきでないことを吹き込み、瀧ちゃんにこんな恐ろしい考えを抱かせてしまったのではないか、と彼女は考えを巡らせた。

「瀧ちゃん、パパのこと知ってるの?」

伊井瀧は、自分が失言したことに今更ながら気づいた。先ほどの言葉の応酬でつい調子に乗ってしまい、うっかり心の内を漏らしてしまったのだ。

彼は慌てて言い直した。

「知らないよ。会ったこともないもん。パパは魔法を習いに行ったって言ってたじゃない」

伊井瀬奈は胸をなでおろしたが、すぐに考え直す。この子は同い年の子と比べて、もともと情動指数も知能指数も高い。油断はできない。

彼女が...

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