第305章

そのスタイリストは雨宮織音のような傲慢さはなく、とても気さくな人だった。

「伊井さん、こちらへどうぞ。細かいところを相談しましょう」

 伊井瀬奈は安心して席に着いた。パーティーに参加するうえ、陸上睦月の同伴者でもあるのだ。きちんと身なりを整えなければ、この後ジュエリーの宣伝などできるはずもない。それなら家に帰って子供の面倒を見ていた方がましだ。

 スタイリストは伊井瀬奈が普段好むメイクやスタイリングについて一通り尋ねた後、彼女の顔の上でそのプロの腕を振るい始めた。

 メイクをしていると、陸上睦月が注文したドレスが届いた。アシスタントがずらりと並んだハンガーラックを直接部屋に運び入れて...

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