第309章

伊井瀬奈は足首を揉んだ。ハイヒールという代物は、まるで女性のためにあつらえられた拷問器具のようだ。履き慣れているとはいえ、彼女の足にはやはり水ぶくれができており、これ以上踊れば皮が破けてしまうだろう。

黒川颯は彼女の仕草に釣られて目をやり、その足の後ろが赤く擦れているのを目にした。彼は眉をひそめ、すぐさま携帯を取り出して神谷竜也に電話をかける。

「奥様の履けるフラットシューズを一足持ってきてくれ。それと、薬局でヨードチンキと外用薬、絆創膏を買って、今すぐこちらへ」

伊井瀬奈は彼を見上げた。

「必要ありません。そんなに弱くありませんから。ここで少し座って動かなければ大丈夫です。もう少し...

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