第311章

一つの咳払いで、伊井瀬奈は胸中の考えを確信した。

 彼女は落ち着きを取り戻す。どちらにせよ、もう来てしまったのだ。この場所には不慣れで、階段がどこにあるかすらわからない。逃げようにも難しいだろう。

 来たからには、甘んじて受け入れるしかない。

「おじさん、九番の患者さんって、あなただったの?」

 伊井瀬奈は手に持っていた水のボトルを、テーブルの上に堂々と置いた。

「このお水、あなたにあげる。これで私のミッションは完了だから、新しいヒントをもらいに下に行かないと」

 黒川耀司はすでに振り返っていた。月光を背にしているため、伊井瀬奈には彼の顔がはっきりと見えない。

「瀬奈、君に相談...

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