第313章

黒川颯は直接後部座席のドアを開けると、自身も続いて乗り込んだ。その方が、前の席より近くに座れるからだ。

「瀬奈、もう誰もいない。話せるだろ?」

伊井瀬奈は軽く咳払いをした。

「どうして神谷竜也を帰したの? まさか、今日もお酒を飲んだわけじゃないでしょうね?」

黒川颯の胸のうちに、じんわりと温かいものが広がった。やはり彼女は自分のことを心配してくれている。自分が酒を飲んで辛い思いをするのではないかと。こんな時に神谷竜也を残しておく理由などないだろう、と彼は心の中で思った。

彼は、今日ひときわ華やかに美しく着飾った伊井瀬奈を見つめ、キスしたい衝動をぐっと堪えて言った。

「少し遅い時間...

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