第329章

 伊井瀬奈はすぐに自分の母、伊井明香のことを思い出した。

 彼女は生涯善良で、毎年慈善活動を行い、どれほどの寄付をしてきたかわからない。

 だというのに、善人が必ずしも報われるわけではない。結局、彼女は何を手に入れたというのだろう?

 彼女が亡くなった後、冷たい手術台の上で心臓を抉り取られた時、その魂も痛んだのだろうか?

「羽鳥汐里、あなたのお母さんがそんな結末を迎えたのは自業自得よ。当然の報いなの!」

 羽鳥汐里は今や狂人のように、髪をかきむしりながら泣き叫んでいた。

「お母さんは全部私のためにやったのよ! ただ自分の娘を愛する普通の女の人だったのに! 一体何が間違っていたって...

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