第331章

伊井瀬奈が航空券を予約し終えて、ようやく運転席の人物に目を向ける余裕ができた。

「黒川颯、ドア開けてよ」

彼女がドアを押してみると、まだロックがかかっている。

黒川颯は口角が上がるのを必死に抑え、平静を装った。

「航空券、取れたのか?」

伊井瀬奈は彼を睨みつけた。このクソ男が盗み聞きしていたのは分かっている。

伊井瀬奈の返事を待たずに、黒川颯はさらに尋ねた。

「何時の便だ? 迎えに行く!」

伊井瀬奈が彼を見ると、黒川颯は懸命に表情を抑えているものの、今の喜悦の情は隠しきれていない。どうやらこの男は真相に気づいているようだ。

まだ正式に打ち明けてはいないので、彼女はわざと彼を...

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