第336章

伊井月は小さな虎のおにぎりを一つ取って一口かじると、なかなか美味しいと感じた。目の前の料理もどれも口に合う。

「ママ、これってJ市にいた時にママが好きだったお料理?」

 伊井瀬奈が答える前に、黒川颯が取り箸でコーラ手羽先を一つ掴み、伊井月の茶碗に入れながら、彼女の代わりに答えた。

「この食卓に並んでいるのは、全部君のママが昔好きだったものだよ。例のおばあさんの腕前さ。君のママは昔、あのおばあさんが作った料理しか食べなくてね。そのおばあさんがわざわざ習いに行ったんだ」

 伊井瀬奈は少し気まずかった。これではまるで、子供の前で自分が偏食家だと言っているようなものではないか。普段は二人の子...

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