第341章

陶山莉緒は自分のバッグに入っている小切手のことを思い出し、今になって少し顔が熱くなるのを感じた。最初、伊井瀬奈から子供一人の一年間の学費だけでもその程度の金額では足りないと聞いた時、彼女が大袈裟なことを言っているのだと思っていた。

 すべて本当のことだったのだ。

 それなのに自分は六千万で相手を追い払おうとしたなんて、本当に恥ずかしい。

 黒川颯は感情のこもらない声で「ん」と相槌を打った。

「あんたが聞いたことのある、あの伊井真だ」

 黒川颯は少し間を置いてから続けた。

「俺が彼女と離婚した時、原因は俺にあった。だから俺は身一つで家を出て、名義のあった財産はすべて瀬奈に譲った。よ...

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