第354章

伊井瀬奈は鳳響司からの夕食の誘いを断り、荷物をまとめると、鞄を背負って一足先に階下で待っていた。

もうオフィスにじっと座っていることなどできなかった。

黒川颯のベントレーが滑るようにやって来て、伊井瀬奈の目の前でぴたりと停まる。彼女は黒川颯を無視し、直接後部座席のドアを開けて子供たちの様子を窺った。

伊井瀧と伊井月の機嫌が悪くないのを見て、張り詰めていた心がようやく落ち着く。

伊井瀬奈は助手席には乗らず、そのまま後部座席に乗り込んだ。

伊井瀧は頼れる味方が現れたことで、男の子としての体面もかなぐり捨て、小さなお尻をもぞもぞと動かして伊井瀬奈にぴったりとくっつき、再び役者モードに入る...

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