第375章

伊井瀧が首を伸ばしてドアの外を窺うと、伊井瀬奈がちょうど洗面器に水を汲んで、外の花に水をやっているところだった。まったくあのクソ親父の言う通り、不機嫌な様子はなく、むしろいつもより目元が晴れやかになっている。

「まあいい、今回は見逃してやる」

 黒川颯はほっと息をついた。

「これはパパとママの秘密みたいなものなんだ。今、君に知られちゃったから、パパとママのために秘密を守ってほしい。他の人には絶対に言っちゃだめだ、わかるかい? もし他の人に知られたら、ママが悲しむことになる」

 伊井瀧は分かったような、分からないような顔で頷いた。もちろん、ママを悲しませたくはない。これでひとまず約束は...

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