第378章

 年を取れば、誰しも子や孫にそばにいてほしいと願うものだ。黒川の爺さんはそこまで頑固な考えの持ち主ではなく、子供たちが幸せであればそれでよかった。黒川颯に伊井瀬奈と共にS市へ行ってほしいと本気で思っているのも、心に寂しさを感じているのも、どちらも本当のことだった。

 黒川颯も馬鹿ではない。黒川の爺さんのその程度の胸の内を見抜けないはずがない。年を取ると子供のようになるというが、爺さんが我慢しているのが彼には見て取れた。

「じいさん、本当は一緒にS市に来てもいいんだぜ。前に言っただろ、あっちに家を買ったって。南の方が空気もいいし、じいさんの療養にも向いてる」

 彼が以前した話に触れられ、...

ログインして続きを読む