第381章

伊井瀬奈のその一言で、車内の空気はにわかに張り詰めた。

彼女は思わず運転席に目を向けた。ちょうど赤信号で、黒川颯は前方を見据え、大きな手でハンドルを握っていた。その顔は無表情で、何を考えているのか読み取れない。

数秒後、電話の向こうの伊井真が答えを出した。

「基準なんて人それぞれだろ。うちの家の雰囲気はお前も知ってる通り、俺たちは別に人を肩書きで見る人間じゃない。お前の将来の相手が貧乏だろうが不細工だろうが、お前が好きななら兄ちゃんは反対しない。ただ一つだけ、肝に銘じておけ。相手の人格は絶対に確かであること。それと、特に名字が黒川ってのだけはダメだ!」

伊井真の後半の言葉に、伊井瀬奈...

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