第390章

長いコール音の末、黒川颯が待っていた伊井瀬奈からの応答はなく、返ってきたのは冷たい機械的な音声だった。

黒川颯の心は一瞬にして不安に襲われた。彼はすぐさま神谷竜也に連絡し、S市への一番早い便を予約するよう指示した。今すぐ飛んで、彼女に説明しなければならない。

電話の向こうで、神谷竜也はおずおずと言った。

「黒川社長、恐縮ですが、しばらくは身動きが取れないかと」

今やこの一件は世間の大きな注目を集め、至る所にメディアが溢れている。様々な経済ニュースや雑誌で頻繁に顔が知られている黒川颯は、一歩外に出れば囲まれてしまうだろう。

「黒川社長、今どちらにいらっしゃいますか。ボディガードを連れ...

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