第394章

S市。

伊井瀬奈は仕事用のメイクを施し、上半身には白いシルクのブラウス、それに合わせたキャリア風のスカートを身につけていた。頭のてっぺんから爪先まで、完全なオフィススタイルだ。

自家用車で会社に向かう途中、アシスタントの石川悦子から電話がかかってきた。

「安奈さん、今日、本当に戻って来られるんですよね?」

伊井瀬奈は片耳にイヤホンをつけ、赤い唇をわずかに開いた。

「もう会社に向かってる」

電話の向こうで、石川悦子の声が弾んだ。

「安奈さん、やっと帰ってきてくれるんですね! 今日の午後、面接の予約が入ってるデザイナーがいるんです。履歴書によると大手での実務経験があるみたいで。戻ら...

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