第397章

歯を磨き終えたばかりの羽鳥業成は、洗面器を持ったまま呆然と立ち尽くした。面会に来る者がいるとは、明らかに予想外だったのだろう。この世にいる彼の身内といえば、二人の娘をおいて他にいない。

伊井瀬奈はもはや彼と縁を切ったも同然。面会に来る可能性があるとすれば、羽鳥汐里だけだろう。前回の労働で良い評価を得て一度だけ電話をかける機会を得た際、娘の汐里が無事に家に戻ったことは知っていた。

そう思うと、羽鳥業成は慌てて洗面用具を置き、警察官について外へ向かった。わずか二分ほどの道のりで、彼はすでに愛娘に伝えたい心温まる言葉をいくつも胸の内で準備していた。

面会室の外には、黒川颯が濃色のスーツに身を...

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