第403章

伊井瀬奈は小さくため息をついた。

「何でもありません、少し貧血気味なだけです」

何もかも詳細に話す必要はない。医師から体調を整える薬を処方されているのは事実だし、伊井瀬奈の言葉は嘘というわけでもない。親しくない元同僚との、当たり障りのない挨拶のようなものだ。

中島玲那はそれ以上深くは聞いてこなかった。その時、彼女の携帯電話が鳴り、短く言葉を交わすと慌ただしく電話を切った。

「ごめんなさい、もう行かないと。息子の薬の時間なの」

そう言い残すと、中島玲那は荷物を抱え、足早に立ち去っていった。

その背中を見送りながら、伊井瀬奈は呆然とした。かつての華やかで輝いていたジュエリーデザイナー...

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