第410章

黒川颯は苦笑し、自らの権利を主張した。

「俺も迎えが必要なんだが」

「あなた、男でしょう?」

伊井瀬奈は考えるよりも先に口走っていた。言い終わってから、黒川颯がじっとこちらを見つめ、全身から危険な香りを漂わせていることに気づく。

「俺が男かどうか、知らないわけじゃないだろう?」

言葉を交わしていると、雨が降り出した。慌てて出てきたため、二人とも傘を持っていない。幸い、会社はすぐそこだ。伊井瀬奈は前方のビルを指差す。

「走って戻りましょう。あそこが会社よ」

黒川颯は辺りを見回した。この場所なら、実は自宅のほうが近い。彼が購入したマンションの利点は、彼女の会社に近いことだった。

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