第419章

伊井瀬奈の声には警告の色が含まれていたはずなのに、口をついて出た響きは妙に甘ったるく、親密さを帯びていた。

自分でも耳にして、思わず赤面しそうになるほどだ。

四年余りの歳月、それほど辛いとは思っていなかった。強烈な欲求など無縁だと思っていたが、この瞬間、彼女の自認は根底から覆された。

ネットでよく言われる「女性はある程度の年齢になると、そちらの欲求も目覚める」という説は、あながち嘘ではないのかもしれない。

まだ三十にもなっていないのに、こんなはずではない。

伊井瀬奈の瞳はどこか潤み、鏡越しに彼と視線を合わせる勇気もなかった。

鏡を見るまでもない。自分が今、どれほど朱に染まっている...

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