第428章

そうこうしているうちに、警備員が到着した。

「何かトラブルでしょうか?」

社員たちは顔を見合わせるばかりで、誰一人として口を開こうとはしない。皆、そそくさと自分の席に戻り、仕事に没頭している振りを決め込んだ。黒川グループ社長の噂話など、聞き流すに限る。知りすぎれば命取りになるからだ。黒川社長は相手を破産に追い込むまで容赦しない男である。今日の出来事は墓場まで持っていくべき秘密であり、軽口を叩ける者などいなかった。

陶山莉緒は再びオフィスの中に視線を走らせたが、伊井瀬奈は相変わらずデスクに寄りかかり、優雅にコーヒーを啜っている。ここに至って陶山莉緒もようやく悟った。あの女は最初から自分を...

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