第431章

黒川颯の頭の中にあるのは、神谷竜也の結婚式がJ市で執り行われるという事実だ。

出席するためには当然、帰らなければならない。十月一日は週末で、せっかく皆の時間が合うのだから、妻や子供と一緒に過ごしたいと思っている。もし彼女と一緒に行けないとなれば、彼としてはかなり頭の痛い問題だった。

伊井瀬奈は片眉を上げた。

「J市で生まれ育って、家だってあるのに、どうして一人じゃ帰れないわけ?」

黒川颯は不服そうな顔を作る。

「お前だってJ市で生まれ育って、家もあるだろう。一緒に帰ろうぜ? 次は『錦園』に泊まるってことでさ」

伊井瀬奈はプッと吹き出した。

「黒川社長、ちょっと甘えん坊すぎません...

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