第433章

黒川颯はお爺さんを見て呆気にとられ、咄嗟に言葉が出てこなかった。

伊井瀬奈はドアに背を向けて座っており、入り口に立つお爺さんには気づいていない。黒川颯の意識がふと途切れたのを察知した彼女は、不満げに両腕を彼の首に回し、顔を仰向けて擦り寄ると、再び彼に絡みつこうとした。

黒川颯は身体を強張らせた。彼女の情熱を避けるには忍びないが、お爺さんの注視の下では応えることもできず、ただ唇を弄ばれるがまま、木偶の坊のように固まっていた。

「どうしたの?」

伊井瀬奈は彼の上の空な様子に気づいた。さっきまで押し倒さんばかりにキスしてきたのは彼なのに、今度は無視だなんて、一体どういうつもりなのか。

黒...

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