第449章

「黒川颯?」

彼女はふいにその名を呼んだ。黒川颯は視線を落とす。

「ん?」

「羽鳥業成の弱み、まだ何かあるんでしょう? どうして全部出さなかったの?」

黒川颯はそこで我に返り、映画がすでに終わっていることに気づいた。どうりで彼女が話しかけてくるわけだ。

「他には特にない。奴が巨額の公金を横領した事実に比べれば、大したことじゃないからな。面会室で言ったのはハッタリだ」

伊井瀬奈の瞳に、わずかな失望の色が浮かんだ。

「てっきり、羽鳥業成の刑を重くできるような弱みを本当に握っているのかと思ったわ。面会室での話し方、すごく真に迫っていたから」

黒川颯は少しの間、沈黙した。

「あの老...

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