第461章

羽鳥汐里は気が立っていた。

昨夜はよく眠れず、つわりのせいで嘔吐が止まらなかったのだ。深夜には悪夢も見た。血まみれの母、高橋蘭がベッドの前に立ち、痛みを訴え、あの人たちに復讐してくれと叫ぶ夢だ。

鬱屈した気分を抱え、朝食も摂らずに会社へ怒鳴り込みに来た。暴れれば、多少は気が晴れるからだ。

まさか、伊井瀬奈本人が会社にいるとは思わなかった。

「伊井瀬奈、ママを返してよ! この人殺し!」

羽鳥汐里は顔面蒼白で、目尻が裂けんばかりに見開かれている。なりふり構わぬ形相だ。

「あんたがママを殺したのよ。ママは血だらけで……」

社内は騒然となり、社員たちは仕事の手を止め、また現れたこの厄介...

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