第490章

黒川颯と伊井瀬奈は子供を抱いて駐車場へと向かう。背後からは、飯塚文桜の悲痛な泣き声が響いていた。

車に戻ると、子供も目を覚ました。見知らぬ場所、見知らぬ人々に囲まれ、子供は口をへの字に曲げてぐずり始めた。

伊井瀬奈には子供をあやした経験がある。抱きかかえて数分もあやすと、子供は泣き止み、言葉にならない喃語を話し始めた。微かに「ママ……ママ……」と聞こえる。

子供が小さな手で伊井瀬奈の髪を弄んでいると、黒川颯はシートベルトを締め、振り返ってその様子を見た。

「瀧ちゃんも、小さい頃はこんな感じだったのか?」

伊井瀬奈は口元を綻ばせた。

「瀧ちゃんのほうが、もっと可愛かったわ」

母親...

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