第3章
朝の七時。私はまだ、昨晩と同じ場所に座っていた。リビングルームの天井まで届く大きな窓のそばで、すっかり冷めきったコーヒーカップを握りしめている。外には息をのむほど美しい日の出が広がっていたが、それを愛でる気分にはなれなかった。
私は答えを待っていた。どんな答えでもいい。
諒哉からの電話、謝罪、あるいは説明。あるいは、心の奥底から湧き上がる勇気が、どんな選択をすべきか教えてくれるのを待っていたのかもしれない。
だが、そこには何もなかった。
ただ、スマホの画面が突然明るくなり、加奈からのメッセージが表示されただけだった。
「美咲、このインタビュー見た? これ……知っておいたほうがいいと思う」
私はそのメッセージを見つめた。胸の中に不吉な予感がこみ上げてくる。
リンクの下には『建築画報』のロゴがあり、見出しが目に飛び込んできた。「夢を築く、建築家・篠原絵里の最も個人的なプロジェクト」
手が震えだした。
答えは出たのかもしれない。ただ、私が望んでいた形ではなかっただけで。
私はリンクをクリックした。
絵里の写真が紙面全体を占めていた。見慣れた崖の端に立ち、まさにこの邸宅を背景にしている。白いブレザーを身にまとい、自信と気品に満ちた笑みを浮かべているその姿は、まるで議論の余地のない事実を宣言しているかのようだった。
「私が最も誇りに思っている作品は、星野市の崖の上にある邸宅です」インタビューの中で絵里はそう語っていた。「ある……とても特別な人のために設計しました。細部に至るまで、私たちの共有する夢と記憶が込められています」
呼吸が早くなる。
「それが完璧に具現化された姿を見るのは、愛が形になるのを見守るようなものです。これは単なる建築ではありません。感情の物理的な表現なのです」絵里は続けた。「真のデザイナーは、空間の隅々に魂を込めるものだと、私は信じています」
カップが床に落ち、激しい音を立てて磁器の破片がそこら中に飛び散った。
記事に添えられた写真には、デザイン画がはっきりと写っており、そこには間違いなく絵里のサインと日付が記されていた――私の結婚式の、丸二年前に。
彼女は公然と所有権を主張している……。私を何だと思っているの? 彼女の居場所を占拠している泥棒だとでも?
震える手でスクリーンショットを撮り、保存した。怒りと屈辱が、波のように押し寄せてくる。
私は長い間、呆然と座り込んでいた。スマホのアラームが鳴り、今日の予定を知らせてくるまでは。
今日の午後は、デザイナーたちの集まりがあったのだ。
普段なら、同業者との交流や作品の紹介ができるこの集まりを楽しみにしていたはずだった。だが、今は……。
鏡に映る、やつれた自分の顔を見た。外に出れば、少しは気が紛れるかもしれない。少なくとも、この「絵里の家」に一人で閉じこもっているよりはマシだ。
午後三時。紅葉通りにあるブティックカフェで、星野市のトップデザイナーたちによる月例会が開かれていた。
私は深呼吸をしてドアを押し開け、何でもないふりを装った。
だが、すぐに異様な気配を感じ取った。
それまで活気に満ちていた会話が唐突に途切れ、全員の視線が私に集中したのだ。
「あれって、篠原さんが設計した家に住んでる人じゃない?」デザイナーの高橋歩美が声を潜めたが、私に聞こえるようにわざと大きな声で言った。
「篠原さんはあの邸宅を自分の最高傑作だと思ってるらしいぜ」もう一人のデザイナー、田中淳が首を振った。「気まずいよな」
私は覚悟を決めて彼らのテーブルへと歩み寄った。妊娠五ヶ月のお腹のせいで、動きが少しぎこちない。「皆さん、こんにちは」
「九条さん!」歩美は驚いたふりをしたが、その目には興奮の色が見え隠れしていた。「ちょうど篠原さんのインタビューの話をしてたのよ。あなたも見たでしょ?」
「ええ」私は平静を装ったが、顔が火照るのを感じた。
「正直、あの家は本当に傑作だよ」淳は私の気持ちなどお構いなしに、単刀直入に言った。「でも、あそこに住んでるって……どんな気分? つまり、本当は篠原さんの作品だって分かってるわけでしょ」
顔が真っ赤になり、耳鳴りがした。「あそこは私の家です。私は諒哉の妻ですから」
沈黙。
そして、さらに突き刺さるような囁き声が続いた。
「だが、インスピレーションもデザインもすべて篠原さんのものだ」ベテランデザイナーの藤本浩史が真っ向から異議を唱えた。「君は……一体どういう役割なんだ?」
まるで頬を平手打ちされたような気分だった。
「九条さん、あなたが才能あるってことはみんな知ってるわよ」歩美は空々しい慰めの言葉をかけたが、その目は見下すような憐れみに満ちていた。「でもあの家は……誰もが篠原さんの作品だって知ってるわ。アーティストの代表作みたいなものよ、分かるでしょ?」
怒りで血が沸騰するようで、私は必死に声を抑えた。「私は誰かの身代わりなんかじゃない!」
全員が顔を見合わせた。
その視線は見慣れたものだった――同情に満ちていながら、残酷なほど雄弁な眼差し。
藤本浩史は軽く鼻で笑った。「もちろん違うさ、九条さん。ただ……物事には複雑な事情ってもんがある。そうだろ?」
気まずい沈黙がテーブル全体を包み込んだ。
私は悟った。私はデザイン業界全体から、完全に爪弾きにされているのだと。
彼らの目には、私は自分の分際をわきまえず、他人の場所を占領しているだけの哀れな馬鹿にしか映っていないのだ。
私は急いで別れを告げ、悪意のある同情に満ちたそのカフェから逃げ出した。
帰りの車中、私の携帯は鳴り止まなかった。「様子を伺う」という名目で、さらなるゴシップのネタを探ろうとする友人たちだ。私はすべての着信を拒否した。
邸宅に戻り、私はリビングのソファに一人で座った――絵里が設計した、このリビングに。
夕日が天井まで届く大きな窓から差し込み、無数のスクリーンショットで埋め尽くされたスマホの画面を照らしている。
『建築画報』のインタビュー、設計図、絵里のサイン、日付入りの証拠……。
私は一つ一つ保存し、すべての画像をバックアップした。
どの写真も、突きつけてくる事実は同じだった。私はずっと、他人の夢の中で暮らしていたのだ。
私は妊娠五ヶ月のお腹を撫で、中の小さな命のリズムを感じた。
これだけの証拠、これだけの真実……。諒哉は私に説明する義務がある。
カチャリ、と鍵が開く音がした。
夜の十時、諒哉がドアを開け、疲れた様子でネクタイを緩めながら入ってきた。ソファに座る私を見て、彼は明らかに固まった。
「まだ起きてたのか? 医者に睡眠は十分とれって言われただろ」彼は話題を変えようとした。「シャワー浴びてくる……」
「待って!」私は立ち上がり、スマホを突きつけた。「説明して、諒哉。絵里のこと、この家のこと、私たちの結婚のこと」
諒哉の表情がすぐに変わった。「美咲、もう遅い。話は明日にしよう……」
「いいえ! 今すぐよ!」声は震えていたが、驚くほど断固としていた。「どうして絵里に私たちの新居を設計させたの? どうして雑誌でこれが彼女の傑作だなんて言わせてるの? どうして今日、デザイン業界のみんなに私が笑われなきゃいけなかったの?」
「絵里の話はしたくない」諒哉の返答は恐ろしいほど冷たく、彼はそのまま階段へ向かおうとした。「この件について話すことは何もない」
私はショックで彼を見つめた。「じゃあ、あなたの解決策は私が隠れていることなの? 私を守ってもくれないし、真実を明らかにもしないの?」
「何を明らかにするんだ?」諒哉は立ち止まったが、振り返らなかった。その声には抑えきれない苛立ちが滲んでいた。「絵里がこの家を設計した。それは事実だ」
心臓が一瞬、止まったようだった。
「私たちの結婚はどうなるの?」声が震え、涙が止まらなく流れた。「お腹の子は? 私はあなたにとって一体何なの?」
「何でもかんでも一緒にするな!」諒哉は鋭く振り返った。その目にはかつてないほどの苛立ちが閃いていた。「これはただの家だ!」
「ただの家?」信じられなかった。「じゃあどうして一度も本当のことを言ってくれなかったの? どうして私が馬鹿みたいにみんなに嘲笑されるのを放っておいたの?」
「いちいち詳細を報告する義務はない!」諒哉の声が大きくなり、すぐに理性を保とうとするように低くなった。「美咲、頼むからそんなに……神経質になるのはやめてくれないか?」
「神経質?」血が逆流した。「私が三年間もあなたの元カノの夢の中で暮らしていたと知って、それを問い詰めるのが神経質だっていうの?」
諒哉は拳を握りしめたが、深呼吸をして自分を制御しようとした。「君と喧嘩はしたくない」
「したいわ!」私は完全に爆発した。「言ってよ、あなたにとって絵里は本当は何なの? どうして私の涙より、彼女の言葉のほうが重要なの?」
諒哉の顔から完全に温度が消えた。目には危険な光が宿り、声は低く、恐ろしい響きを帯びていた。
「俺を追い詰めるな……美咲」
空気が凍りついた。
胸を殴られたような衝撃を受け、息をするのもやっとだった。
夫の見知らぬ顔を見つめ、私は初めて悟った。この人は、本当の意味で私のものだったことなど一度もなかったのだと。
