第4章
だが、私はもう後がないところまで追い詰められていた。
「無理にでも言わせてもらうわ」私の声は、自分でも不気味なほど冷静だった。「本当のことを言って、諒哉。あなたが本当に愛しているのは誰なの?」
諒哉の表情が一変した。その瞳には、今まで見たこともないような冷たい光が宿っていた。「真実が知りたいのか?」
「ええ」
彼は数秒間、何かを決意するかのように私を見つめた。やがて、その唇が歪み、残酷な笑みを形作った。「真実はこうだ。ああ、そうだとも。この家は絵里のデザイン通りに建てた。俺たちはかつて、ここで一緒に暮らすつもりだった。……それがどうした?」
雷に打たれたような衝撃が走った。「あなた……認めるの?」
「認めるも何も、俺に過去があるってだけのことだろう?」彼の声は次第に冷たさを増し、言葉の一つひとつが氷の刃となって私に突き刺さった。「いい加減にしろ! 俺から離れてどうするつもりだ? どこへ行く気だ? 実家のあのみすぼらしいアパートにか?」
その言葉は、平手打ちのように私を打ち据えた。私はショックでよろめき、後ずさる。夫の口からそんな言葉が出てくるなんて信じられなかった。「今……なんて言ったの?」
「お前もその赤ん坊も、俺のおかげでいい暮らしができてるんだろうが!」彼は完全に仮面を脱ぎ捨て、悪意に満ちた声を張り上げた。「ここで騒ぎ立てる前に感謝したらどうだ! 俺がいなけりゃ、お前なんて無価値なんだよ!」
心が引き裂かれた。彼は私のことをそんなふうに見ていたのだ――施しを必要とする哀れな生き物として。私の愛も、献身も、妊娠も、彼にとってはすべてただの重荷でしかなかったのだ。
「あなたの施しなんていらない!」私は叫んだ。「離婚よ!」
「離婚だと?」彼は嘲るように笑い、その声が何もないリビングに虚しく響いた。「どうやって子供を育てるつもりだ? 両親のあの惨めな稼ぎでか? それとも、お前のあのお遊びみたいなデザインの仕事でか?」
すべての言葉が毒矢となって、私の最も弱い部分を射抜いていく。私の生い立ち、仕事、これまでの努力……彼の目には、そのすべてが滑稽なものに映っていたのだ。
「もう、あなたとは一言も話したくない」私は階段へと背を向けた。全身の震えが止まらない。逃げなければ。この怪物から、一刻も早く遠くへ。
「逃げるな!」彼が私の腕を乱暴に掴んだ。痛いほど強い力だった。「話は終わってないぞ!」
「離して!」私は彼の拘束を強引に振りほどいた。
その瞬間、バランスが崩れた。
時間が凍りついたように感じられた。体が後ろへと倒れていく感覚。絵里がこだわり抜いてデザインした大理石の階段が、ぐんぐん迫ってくる。かつては彼女の夢を彩る優雅な装飾だったはずの冷たい石が、今は怪物が大きく開けた口のように見えた。
腰が階段の角に激しく打ち付けられた。耐え難い激痛が瞬時に走り、背骨を伝って腹部へと突き抜けていく。
嫌、嫌、嘘よ!
「赤ちゃん……」私はお腹を抱え込んだ。温かいものが脚を伝って流れ落ちていくのが分かる。「私の赤ちゃんを助けて……」
諒哉の表情が瞬時に変わった。彼は慌てて駆け寄ろうとしたが、私は彼を突き飛ばした。痛みのあまり立ち上がることもできず、冷たい大理石の床の上で体を丸めることしかできなかった。
「救急車を呼んで!」涙声で絶叫した。「今すぐ救急車を!」
十分後、救急車のサイレンが夜を引き裂いた。ストレッチャーの振動が痛みをさらに激しくする。私は救急隊員の手を強く握りしめた。「お願いです、赤ちゃんを助けて……」
「全力を尽くしますからね」看護師は私を励まそうとしてくれたが、その目には明らかな焦りの色が浮かんでいた。
救急救命室では医師たちが慌ただしく動き回っていた。私は手術室へと運ばれたが、頭上のライトが眩しすぎて目を開けていられない。麻酔で意識がぼやけていく中、心の中の恐怖だけが、より一層鮮明になっていった。
再び目が覚めたとき、医師がベッドの脇に立っていた。マスクを外した彼の表情が、すべてを物語っていた。
「非常に残念ですが……。手は尽くしました。赤ちゃんは、助けられませんでした」
世界が崩れ落ちた。
私の赤ちゃん。五ヶ月になる私の赤ちゃん。胎動だって感じていたし、名前だって決めていたのに――陽向。どんな顔をしているのか空想したり、初めて「ママ」と呼ぶ声を想像したりしていたのに。
今はもう、何もない。
「一人にしてください」声は枯れ、涙が音もなく溢れ出した。
医師は頷き、部屋を出て行った。病室には私と、巨大な虚無感だけが残された。
いや、待って。何かがおかしい。
廊下から聞き覚えのある声が聞こえる。電話で話している諒哉だ。
「なんだって? またお前が泥棒猫だなんてネットで書かれてるのか? ……大丈夫だ、すぐに行って慰めてやるから」
心が完全に氷の底へと沈んでいった。私は子供を失ったばかりなのに、彼は絵里の評判を心配しているの?
医師が戻ってきて、諒哉の会話を耳にし、困惑の表情で彼を見た。「ご主人、奥様は流産されたばかりで、まだお辛い状況なんです……」
諒哉は面倒な重荷でも見るかのように、苛立ちを隠さずに私を一瞥した。「治療費は俺が払う。美咲、お前は休んでろ。絵里には俺が必要なんだ。変な噂で彼女のキャリアに傷がついたら大変だろう」
私は力なく手を伸ばした。「諒哉……私たちの赤ちゃんが……」
だが、彼はすでにドアの方へと歩き出していた。「また作ればいいだろ」
病室のドアが閉まる音は、私たちの結婚生活という棺に打ち込まれる最後の釘のようだった。
私はすべてを失った。子供も、結婚も、尊厳も。そして最後に残されていた一縷の希望さえも、彼の手によって絞め殺されたのだ。
その夜、私は一睡もできなかった。冷たいベッドに横たわり、天井を見つめながら、体の中に広がる巨大な空虚さを感じていた。五ヶ月の陽向は二度と私のお腹を蹴ることもないし、私をママと呼ぶこともない。
翌朝、病室に差し込む日差しは残酷なほど眩しかった。
携帯電話が震え、メッセージの着信を告げる。
送信者は諒哉。
「後の手続きは秘書に任せた。絵里も、これでよかったのかもしれないと言っている。俺たちはまだ若いし、機会はいくらでもある。体、大事にしろよ」
画面に並ぶ冷たい文字を見つめ、指先が震えた。
絵里が、これでよかったと言っている?
私が子供を失ったことさえ、絵里の「承認」が必要だったというの?
笑いたかったが、笑えなかった。泣きたかったが、涙はとっくに枯れ果てていた。
私はゆっくりと起き上がり、サイドテーブルの鏡を手に取った。そこに映る女はやつれ果てていたが、その瞳の奥には何かが燃えていた。
それは悲しみではない。絶望でもない。
氷のように冷徹な、決意だった。
私は携帯電話を手に取り、諒哉のメッセージを削除すると、連絡先を開いて長い間かけていなかった番号を探し出した。
離婚弁護士、相沢賢治。
コール音が二回鳴り、相手が出た。
「はい、相沢法律事務所です」
「賢治、私よ。長谷川美咲」私の声は、不自然なほど落ち着いていた。
数秒間、電話の向こうで沈黙が流れた。「美咲? なんてことだ、大丈夫? 話は聞いたよ……赤ちゃんのことは……」
「助けてほしいの」私は彼の言葉を遮った。
「もちろんだ。離婚したいんだね?」
「ただの離婚じゃないわ」私は窓辺に歩み寄り、遠くに見える煌びやかなマンションを見つめた。「あいつらに償わせたいの。二人ともよ。すべてのことについて」
賢治の声が真剣なものに変わる。「君の怒りは理解できる。だが、法律には証拠が必要だ。精神的な浮気というのは証明が難しくて……」
「証拠?」私は小さく笑った。その声は氷のように冷たかった。「それこそが、これから私がやろうとしていることよ」
