第44章 彼は望んでいる

スローン視点

私は掌をぎゅっと握りしめた。爪が皮膚に食い込み、じくりとした痛みだけを頼りに、崩れ落ちないよう踏みとどまる。

待っていた。

彼の答えを。

さっき階下でそうしたみたいに、皆の前で――私が彼の妻だと、揺るがず言い切ってくれるのを。

「俺はそうする」と。

1秒。

2秒。

10秒。

書斎に満ちたのは、死んだような沈黙だけ。

返事がない。

彼は、黙ったままだった。

その沈黙はどんな罵倒よりも残酷で、氷を塗った刃みたいに、ようやく灯った小さな火種を狙いすまして心臓に突き立て、ぐり、と抉り、みすぼらしい期待を粉々に砕いた。

――これが、彼の選択。

家の利益と継承権...

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