第56章 元夫

スローン視点

埃まみれのあの部屋で、どれだけ座り込んでいたのだろう。窓の外の薄明かりが、夜の闇に完全に飲み込まれるまで。

身体はこわばり、血液さえ固まってしまったみたいで。胸の奥では心臓だけが乱暴に暴れていた。その一打ごとが、あの馬鹿げていて恐ろしい現実を突きつけてくる。

グレイソンは、生きている。

幽霊みたいに、私の生活の隅々に潜み、氷のように冷たい目で覗き込み――裁く。

ケイラの脚も、彼の仕業なのだろうか。

日記帳に残されたあの一文が、悪魔の呪いみたいに私を責め立てる。

「スローン?」

ドア口からマリア院長の声がした。心配が滲んだ声。

「もう真っ暗よ。いつまでこもってる...

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