第7章

山の神祭りの夜が、ついに来た。

しんしんと雪の舞う夜空の下、白峰村の者たちが皆、神社の前に集っている。凍てつく風に赤い提灯が頼りなく揺れ、人々は分厚い冬着に身を包み、祭壇の周りに敬虔な面持ちで佇んでいた。

不思議なほど、心は凪いでいた。

五年ぶりに感じる、嵐の前の静けさ。今宵、すべてが終わる。

「雪奈様、どうか……幕開けの神託の儀を」

祭壇の下から、源次郎が絞り出すような声で言った。闇に揺れる彼の瞳が、疑念と恐怖に濡れているのを私は知っていた。

私は結衣を抱き上げ、ゆっくりと祭壇へ向かう。村人たちは自ずと道を開け、深々と頭を垂れた。この五年、私が彼らの心に丹念に築き...

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