第173章

二日目。

十年前の唐沢優子は、助け出されるその日まで気づかなかった。人魚が彼女を保存食として飼育していたのではなく、真剣に、そして細心の注意を払って世話をしていたのだということに。

だが、あの頃の彼女は誤解していた。

だから彼を拒絶し、恐れ、避けていた。

今回、人魚は姿を見せなくなった。唐沢優子は水面をかき混ぜながら、自分でもよく理解できない複雑な悲しみが心に湧き上がるのを感じた。

どうして来てくれないの?

彼女は岩礁に腰掛け、入り江に向かってぼんやりと物思いにふけっていた。

ここの砂浜にはたくさんの貝類と、岸に打ち上げられた一匹の魚が散らばっていた。

唐沢優子はまつ毛を伏せ...

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