第176章

口の中に、微かに鉄錆びた甘い味がした。

奇妙な熱い流れが喉を伝って胃へと流れ込み、それがまた不可解にも全身を火照らせる。形容しがたい芳香が、唐沢優子の鼻腔をくすぐった。

彼女が瞼を上げると、そこには流れる光のような、淡い金色が広がっていた。

「行ってって、言ったじゃない」

目の前の影が、ぴくりと硬直する。

唐沢優子は視線を落とし、そこでようやく、心を揺さぶるほどに美しい銀青色の魚の尾が、自らに幾重にも巻き付いていることに気づいた。まるで巨大な蟒蛇が獲物を捕らえるように。きらびやかな鱗は、砕かれた清らかな月光のごとく、冷たい気配を放っている。

人魚は沈黙したまま、わずかに頭を垂れて...

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