第189章

夜のノア。

どこまでも続く海岸線は、風も波もなく、近頃では珍しいほど穏やかな天候だった。

波と風は幾分か和らぎ、まるで心遣いのできる紳士が、これから夢路につく人々のために安眠用のホワイトノイズを流しているかのようだ。

職員宿舎の外壁には、ざわめく木々の影が映り込み、その中に素早く通り過ぎる人影が混じって一瞬で消える。

訓練を積んだ潜入部隊が、黒い特殊制服に身を包み、この宿舎へと素早く侵入する。目標は明確で、百階に静かに潜伏することだった。

ノアは表向きは礼儀と客人の道を守りつつも、内心ではバベルタワーからの来訪者の素性を疑っていた。

そこで、夜間の訪問を決行することにしたのだ。

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