第22章

人魚は淡々と「ん」とだけ応えた。その低く磁性を帯びた声には、どこか冷たさが混じっていた。

彼はとても冷淡だ。

しかし、唐沢優子には彼を怒らせるようなことをした覚えはなかった。

唐沢優子はやむを得ず彼に腕にしがみつき、水面から必死に頭を出して、口や鼻が水に浸からないようにした。

「どうしてこんなところに隠れてるの?」彼女は底の見えない巨大な水槽を見つめ、少し怯えながら尋ねた。「この中に何か危ないものが入っていたりしない?」

人魚は睫毛を上げ、笑っているのかいないのか分からない表情で彼女を一瞥した。

「怖いのか?」

「うん」彼女は正直に頷いた。

水中には凶暴な怪物が潜んでいるよう...

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