第281章

人は夢を見ている時、それが夢だと自覚できるものだろうか?

夢は概ね一人称視点で、夢を見ている本人には自分の姿が見えない。だからこそ、すべてが現実だと思い込んでしまう。

ひとたび理性が戻れば、夢は終わりを告げる。

だが、それが悪夢だったとしたら?

夢の中の人間は、あまりに恐ろしい光景に疑念を抱き、早く夢から覚めろと自分に言い聞かせる。そして、覚醒したと思い込んだまま、また別の夢へと陥るのだ。

ある種の悪夢は、夢の中のすべてに人を魅了させ、耽溺させ、目覚めることを拒ませる。

水谷温樹は自分が奇妙な渦に巻き込まれているような感覚に陥っていた。

車の中からあのおぼつかない足取りの少女を...

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