第29章

人間の女性の指の腹は、温かく柔らかい。ひんやりとした軟膏が皮膚の表面で溶け、傷の麻痺を和らげると同時に、これまで感じたことのない奇妙な感覚をもたらした。

実に不可解で、未だかつてない感覚だった。

人魚は唐沢優子からの積極的な接触を甘んじて受けるしかなかった。その表情は最初の戸惑いから、やがて何かを堪えるような震えへと変わり、ひどく耐え難い様子に見える。

「どうしたの? 痛む?」唐沢優子は相手が僅かに身を引いたことに気づき、気遣わしげに尋ねた。

淡い金色の髪の下で、半透明の耳鰭がぴくりと動く。蒼白かった肌は微かに赤みを帯び、人魚は唇を噛んで何も言わない。その姿は、ことさらに……...

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