第30章

それはかつて、幻想の物語の中にしか存在しないとされた神秘的な生物。人々が空想の産物として語り継いできたものだ。今回、人魚と出会ったことで、十年前の出来事が決して現実離れした夢などではなかったと、ようやく証明された。

人魚という生物は、過去であれ現在であれ、いつも彼女の命を救ってくれるらしい。

唐沢優子は心の底から、この種族に対して限りない好感を抱いた。

ふと、彼女は奇抜な考えを思いつき、尋ねた。

「あなたの涙は、真珠になったりするの?」

人魚は彼女を見上げたが、その質問の意味が理解できないようだった。

彼女はさらに問いかける。

「人魚の肉を食べると、不死者になれるって聞いたこと...

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