第320章

奇妙なトーテムは幻覚を引き起こす。一種の精神汚染のようだ。

ふとした瞬間、唐沢優子は眼前の彫刻が生き返ったかのような感覚に襲われた。

彼女は水に触れた。

透明で、湿った粘液。

目の前の冷たく硬い石像とは違い、指先には柔らかな感触が伝わり、視界には突如として無数の蜘蛛の巣と、宙を舞う埃が現れた。

一瞬にして、教会全体が色褪せ、荒れ果てた古い建物へと変貌した。

色鮮やかなアーチ型の窓は砕け散り、外から内へと冷たい風が吹き荒れる。頭上の照明もそれに伴い消えた。

足元には雑草が生い茂り、割れたガラスの破片が散らばっている。

煉瓦の隅々まで湿った薄暗い苔が這い登り、ただ眼前の彫刻だけが...

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