第395章

ビルを出る際、唐沢優子は一階のロビーで再び常泉絃の姿を見かけた。

すらりとした長身の男は、細いメタルフレームの眼鏡をかけており、目を逸らせないほどに整った顔立ちをしていた。

彼はガラス扉のそばに立ち、スマートフォンに目を落としている。ちらほらと通り過ぎる人々が彼に挨拶し、礼儀正しく、恭しく彼を教授と呼んだ。

常泉絃はただ軽く頷くだけで、まるで溶けることのない一握りの雪のようだった。

唐沢優子は無意識に彼のそばへ行きたくなった。

しかし、脳裏に彼の「私の邪魔をしないでください」という冷たい言葉がよぎり、燃え上がっていた情熱は冷水を浴びせられたかのように消え失せた。

足を止め、躊躇い...

ログインして続きを読む