第406章

扉の外に立ち、常泉絃はドアノブに手をかけた。だが、ふと考え直し、ノブから手を離すと、指を折り曲げて軽く扉を叩く。コンコン、と。

あの人間は、自分を見ればきっと喜ぶはずだ。

彼女が向けてくれるかもしれない、あの目を細めた柔らかな笑顔を想像するだけで、常泉絃の表情には、彼自身さえ自覚していない優しさが滲んだ。

一瞬、胸の奥が痺れるような、奇妙な感覚に満たされる。

扉の前に佇み、彼はその人間が自分を見てどんな反応をするか、不意に期待してしまったのだ。

しかし——扉は開かない。

しばらく待ってから、彼は腕を上げ、忍耐強くもう一度ノックした。

やはり応答はない。

微かに綻んでいた口元が...

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