第43章

青年は僅かに身を起こした。その全感覚が、彼女に押し返された肩の一点に集中する。温かい掌が、燃え盛る大火を巻き起こした。触角に引かれるようにして彼は体を起こし、完全に立ち上がってはいないものの、既に彼女を居丈高に見下ろすほどの高さになっていた。

彼の白く冷たい指の骨が、ガラス水槽の縁にかかる。端正な顔には、濡れて柔らかそうな深緑色の髪が張り付き、緩やかにカーブを描いて額にかかっていた。瞳は照明の光を反射し、格別に瑰麗に見える。

ふとした瞬間に、まるで深淵のようで、人をぞっとさせた。

彼の眼差しは唐沢優子の顔の上を彷徨い、そこには何か複雑で奥深い情念が宿っていた。

「優子……」

彼はも...

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