第45章

唐沢優子は何も言わず、身体を支えて力強く跳躍し、不安定な足取りでガラス槽から這い出た。

17号はそこでようやく自分が間違っていたことに気づいた。飼い主が去っていく様子に彼は恐怖を覚え、すぐさま彼女の後を追って水槽から這い出ようとしたが、唐沢優子に鼻先を指さされ、冷たい声で言われた。

「戻りなさい」

タコはぴたりと動きを止めた。

彼は「優子」と声をかけたが、何の返事もなかった。

おそるおそる触手を伸ばして彼女の後をついていくと、普段とは違う飼い主の氷のような声が聞こえた。

「近寄らないで」

優子は本気で怒っていた。

青年は、水滴が彼女の服の裾から滴り落ち、すぐに床に水たまりを作...

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