第51章

人魚は一途な種族だ。生涯を共にする伴侶制度を持ち、愛する者への忠誠は死が二人を分かつまで続く。多くの人魚は伴侶に先立たれると、残された方も失意のうちに後を追うように死んでいく。

それゆえに、なぜ人が自分から何度も離れていくのか、彼には理解できなかった。

人間は、人魚に魅了されるのではなかったか?

人間は、美しい外見を好むのではなかったか?

人魚は好奇心に駆られ、彼女の首筋に顔を寄せて匂いを嗅いだ。まるで極上のご馳走を見つけたかのように。薄い唇が、恋人同士のようにその肌に触れんばかりに近づく。

甘い香り……。

彼は貪るように彼女の首筋の匂いに身を寄せ、その瞳は灼けるような独占欲に満...

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