第63章

この世界の月光は、どうやらひどく明るいらしい。

唐沢優子は空を仰ぎ見て、思わずしゃっくりをした。

誰か教えてくれないだろうか。なぜ空に巨大な一対の瞳があるのかを。

彼女が驚きから立ち直る間もなく、顔を両手で包み込まれた。その人物は灼熱の眼差しで彼女を見つめ、鼻先を寄せると、彼女の唇のあたりで匂いを嗅いだ。

そしてぱちぱちと瞬きをしながら、不思議そうに尋ねる。

「何を口にしたんだ? いい匂いがする」

「……」唐沢優子は自分が食べたのがニラでなくてよかったと胸を撫でおろした。「お酒」

「酒?」彼は期待に満ちた表情で、「一口もらってもいいか?」と言いながら彼女の唇に顔を近づけてきた。...

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