第65章

光が翳っていく。

桜井智は街灯の下に立ち、その眉目には優しさと哀愁、そして名残惜しさが浮かんでいた。

「アルセル、君の誕生日に贈った本、開いてくれたかい」

「捨てたわ!」アルセルは目を赤くして言った。「もう別れたんだから、あなたの本なんていらない!」

桜井智が怒るかと思ったが、意外にも彼はほっと息をついた。「捨ててくれたなら、それでいい」

見捨てられたという怒りがこみ上げ、アルセルは言いたい放題にまくし立てた。

「桜井智、まだ私があなたのこと好きだなんて思わないでよね。今日あなたに会わなければ、あなたのことなんてとっくに忘れてたんだから!」

桜井智は黙って彼女を見つめ、一言も発...

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