第75章

ピンポーン——

軽い音が響き、サービスアパートメントのエレベーターのドアが開く。

しかし、誰も出てこなかった。

しばらくして、エレベーターのドアは自動で閉まった。

だが数秒後、再び「ピンポーン」という軽い音が聞こえた。

エレベーターのドアがもう一度開き、斜めに影が差し込む。

警備員は監視室でエレベーターの異常に気づき、ドアを押し開けてエレベーターホールへと向かった。はじめはエレベーターの故障だと思ったが、中に人がいることに気がついた。

ふらふらと立ち、全身ずぶ濡れで、頭をエレベーターの壁に押し付けるという奇妙な姿勢で、ドアに背を向けて壁に張り付いている。

支えがなければ立って...

ログインして続きを読む