第77章

唐沢優子には、いわゆる褒美が何なのか、分からなかった。

人魚が手を伸ばし、彼女の顔を包み込む。

視線が不意にその銀色の瞳に落ち、一瞬で深い渦に吸い込まれたかのようだった。

思考が刹那のうちに剥ぎ取られる。

彼女は操り人形のように力を抜き、瞳から焦点が失われ、鼻腔が蠱惑的な血の香りを嗅ぎ取った。

まるで一年中雪山に隠された蓮のようだった。幽暗で、痕跡すら見つけられない。だが、相手が手を持ち上げ、切り裂かれた手のひらを見せた途端、その存在が明らかになる。

彼女はぼんやりと本能に従い、血の滲む場所へと近寄っていく。

人魚のもう片方の手が彼女の肩を掴み、軽く引き寄せると、彼女はすでにそ...

ログインして続きを読む