第80章

唐沢優子は慌てて水槽をベランダまで引きずり、カーテンを引いてからアセルランの部屋のドアを開けた。相手は緊張した面持ちで、声が少し震えている。

「優子、大変なことが起きたの!」

事件が起きたのは、アセルランの隣の部屋だった。

そこに住んでいたのは夫婦で、基地の機材品質検査員だった。唐沢優子は何度か見かけたことがあるが、とても人の良さそうな二人だった。

死体は見るも無残な姿で、腹部はえぐり取られ、まるで何かに暴力的に噛み砕かれたかのようだった。片方の肩は失われ、現場は非常に血生臭かった。

夫は玄関で、妻はベッドの上で死んでいた。

そして更に恐ろしいことに、アセルランの部屋の...

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